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2017年 衆議院総選挙 希望の党と立憲民主党 ~議員の当選回数から、その特徴を見る~

 

 総選挙が終わった。

 

 最終的に競り合った選挙区では、与野党で勝敗が分かれたが、事前の調査では劣勢が伝えられた方の候補者が競り勝つ例や最後の最後まで接戦に持ち込まれた例も多かった。当初、300議席越えも予想された自民党は現有議席の284議席からほとんど変わらずに281議席の獲得に留まり、いわゆる非自公の野党側が最後に競り勝った選挙区が多かったと言うことも出来るだろう。

 

 

民進党から立候補予定だった候補者は?

 選挙直前に、民進党から希望の党への合流、そして、立憲民主党の結成と、急転直下の展開があった。希望の党と立憲民主党のいずれにも加わらずに無所属で立候補して当選した候補者も20名を超えた。立憲民主党の当選者だけではなく、希望の党の当選者も民進党出身者が多数を占めた。具体的には、解散時の民進党議員88名のうち、立憲民主党から15名、希望の党から26名、無所属で18名が当選して、再度国会に議席を得ている。立憲民主党や希望の党からは、当初は民進党の公認候補として出馬予定であった候補者も立候補しており、それぞれ新人の当選者も出している。

 

新人23人が当選した立憲民主党

 

立憲民主党は上記の15名含めて計54議席を獲得して、野党第一党となった。

 

 立憲民主党の小選挙区からの当選者は、民主党時代から支持の厚い地域であった北海道・東京・神奈川・愛知を中心に17名であった。代表の枝野幸男氏の埼玉5区、その他に、元民主党代表の海江田万里氏が東京1区で競り勝ち、東京18区では菅直人元首相も前回負けた相手を退けた。この他に民主党政権時に大臣を務めた荒井聰氏や長妻昭氏も小選挙区で当選した。また、いわゆる民進党のリベラル勢力の中心人物の一人であった赤松広隆氏も愛知5区を制し、辻元清美氏も大阪10区で安定の強さを見せて勝利している。彼ら、民主党時代から要職を務めてきた当選回数が5回を超えている。具体的には、菅氏が13回目、赤松氏が10回目、枝野氏が9回目、荒井氏8回目、海江田氏・長妻氏・辻元氏が7回目の当選である。その他、みんなの党や維新の党を経て立憲民主党に参画することになった東京6区の落合貴之氏や東京16区の青柳陽一郎氏も当選している。

 

 立憲民主党は中堅からベテランに分類される当選回数の多い議員と当選回数1・2回の若手が多い党となっている。特に、新人が23人(参議院議員経験者も含む)も当選しており、この点を見ても、同党に追い風が吹いていたことがうかがえる。風の力もあってか、立憲民主党はベテランと新人という興味深い構成からなる政党になったのである。

 

中堅議員が揃った希望の党

 

 一方、希望の党は、民進党の前原グループや細野グループ、野田グループに所属していた議員を中心に50名の当選者が出ている。こちらは当選回数5回以上となる当選者が多いのが特徴だ。

 

 政権与党であれば、初入閣適齢期とも言われる当選5回が岩手1区の階猛氏、比例東北の寺田学氏、比例東海の岡本充功、比例中国の柚木道義氏、比例四国の小川淳也氏、佐賀2区の大串博志氏、比例九州の吉良州司氏である。さらに、当選6回となるのが比例北関東の小宮山泰子氏、神奈川6区の笠浩史氏、比例南関東の田嶋要氏、東京21区の長島昭久氏、愛知11区の古本伸一郎氏、比例東海の牧義夫氏、比例近畿の樽床伸二氏、比例中国の津村啓介氏である。

 

希望の党の議員の中で最多の当選回数となるのは8回で、静岡6区の渡辺周氏、愛知2区の古川元久氏、比例九州の中山成彬氏がこれにあたる。そして、埼玉6区の大島敦氏、比例東京の松原仁氏、静岡5区の細野豪志氏、京都3区の泉健太氏、比例近畿の山井和則氏の当選7回組が続く。

 

初当選組は8名と、立憲民主党と比較すると新人の割合が小さい。希望の党は、当選5回から7回を誇る議員が分厚い層をなす、いわば中堅議員が揃った政党となったと言えるだろう。当選者数は立憲民主党に後れを取り、野党第2党になったため、国会運営でも厳しい立場に置かれることにはなるが、国会での十分な活動経験を持つ議員による「戦える集団」であることは間違いなさそうだ。

 

自民党は魔の2回生に苦戦

自民党の場合、民主党から政権を奪い返した2012年の総選挙で初当選し、その後、今回の選挙まで連続当選している当選3回組が大きな比重を占めている。総選挙前まで、彼らは「魔の2回生」と呼ばれ、相次ぐ不祥事の原因を作っていた。今回、彼ら当選2回組は自民前職全体の4割近くを占める101名が立候補したが、87名の当選にとどまった。全体の獲得議席数は微減であった自民党の中では、この当選2回組の苦戦が目立ったのである。それでも、280のうち約90を占めているわけで、彼らが党の中では大きな割合を占めていることに変わりなく、今後自民党内で混乱が起きるようなときには、彼ら当選3回組が結束して行動を取るといったことも見られそうだ。

 

国会は数の力がものを言い、多数を占めるのが基本となるが、一方で、個々の国会議員の力量が問われる場面も少なくない。とりわけ、国会での経験がものを言う場面が存在する。立憲民主党は修羅場をくぐってきたベテラン議員が、希望の党は働き盛りとも言える中堅議員がそれぞれ力を発揮することが出来れば、国会で野党としての存在感を見せることが出来るのではないだろうか。