霞が関から見た永田町

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学校給食に見る国会議員の役割

 

インターネットで「国 地方 役割分担」と入力して検索すると、総務省、財務省、文部科学省、全国知事会、指定都市市長会など、省庁をはじめ様々な公的機関が出しているレポートが出てくる。そこに書かれているのは、例えば、こんな感じだ。「国の役割は、全国的に統一される必要がある基本ルールの策定、国家間の政策に限定し、原則として自治体が担う」(全国知事会資料よりhttp://www.nga.gr.jp/ikkrwebBrowse/material/files/group/3/4200712shiryou2.pdf)。

 

 

 

 

この基準に照らし合わせると、とても不思議な法律がある。「学校給食法」だ。同法第2条には「学校給食の実施に当たっては、義務教育諸学校における教育の目的を実現すること」、第4条には「義務教育諸学校の設置者(自治体のこと)は、当該義務教育諸学校において学校給食法が実施されるように努めなければならない」旨が記載されている。要は義務教育の目的達成のために、給食は実施しなさいよ、ということだ。

 

 

学校給食の実施の可否が選挙の争点になるおかしさ

 

ところが不思議なことに学校給食は自治体によって対応がまちまちである。文部科学省が行なった2016年の調査によると、小学校における給食実施率は99.2%(100%ではない)、中学校における給食実施率は88.9%。特に中学校における給食実施率は低く、たびたび、地方都市の市長選挙では学校給食が選挙の争点になるほどだ。

 

これは中学校給食が当たり前に存在した自治体で義務教育を受けた人にとっては、給食が選挙の争点になることが不思議でならないという。「ないことがおかしいのに・・・それを有権者の信を問うってどういうこと?」。
特に給食の実施率を引き下げているのが神奈川県だ。都道府県別でみると、首都圏に絞っても、千葉県は実施率100%、埼玉県が99.5%、東京都、茨城県が98.7%、群馬県が97.5%、栃木県が96.9%であるのに対して、神奈川県はなんと27.1%。

 

もちろん、これには歴史的な背景がある。昭和30年代後半から40年代にかけて人口が急激に増えた時期、例えば横浜市などは毎年20万人ずつ人口が増え、そのために学校の整備だけで手一杯で給食室の配備やそれに伴う人件費の予算が取れなかったというものだ。

 

この辺の事情は首都圏だけでなく、全国の政令指定都市に強雨痛した歴史的背景だが、近年に若手市長が各都市で誕生したこともあって、この10年を振り返っただけでも川崎市、名古屋市、大阪市、堺市、神戸市、北九州市と次々と中学校給食の実施に踏み切り、今や残されているのは横浜市だけという状況になりつつある。

 

 

法律の運用の歪さを正せるのは国会議員だけ

 

さて、冒頭の話に戻ろう。地方分権が叫ばれて久しいが、国でも知事会でも指定都市市長会でも、基本路線としては「ニアイズベター」の補完性の原理に従って、現場の基礎自治体に権限を任せていくことになっている。ただし、そうはいっても国で定められた法律(ルール)があれば、そのルールの中で自治体が独自性を出していく、というのが本筋である。その大前提に立てば、中学校給食が一部の特定のエリアだけ実施されていないというのは歪としか言いようがない。

 

給食必要論には、反論はほぼ定型化していて、ひと昔前なら「お弁当愛情論」、最近だと「お弁当定着論」がある。「制度がないからお弁当を持っていっているだけで、別にお弁当が定着しているわけではない。それしか選択肢がないだけだ」と、その度に給食必要論者も反論するが、これは相手の土俵に乗った戦いで分が悪い。

 

大事なことは、国のルールがどうなっているか、この一点なのである。ルールに従っているのであれば、それでいいし、ルールから外れているのであれば、是正すべきであろう。

 

そろそろ、こうした不毛な議論を終わらせるためにも、国会でこの問題はしっかり議論すべきだと思う。仮に中学校の給食が時代に合ってないのだとすれば、法律を改正し、中学校における給食の実施を義務付けなければいいのである。

 

逆に法律の趣旨を今のまま活かそうということであれば、横浜市をはじめとして神奈川県内に点在する、給食未実施の自治体に対して国が指導すべきではないか。あるいは、補完性の原理に従って、法律を一部改正し、給食は法律で位置付けず、自治体の判断に委ねるというのも、住民自治の視点からあり得る判断だろう。

 

 

野党は今こそかゆいところに手が届く議論を

 

いずれにしても、現状の中学校給食は法律から見ても、一部の特定のエリアだけで実施されていない現状はとても歪であるし、この辺は国会でしっかりと議論してもらたいところだ。先の衆議院選挙を経て、安倍政権は教育の無償化を進めようとしている。

 

これはこれで大事なことだが、その前にやって当たり前のことをまだやれてない現状を是正すべきであるし、政権与党がそのことに気づいていないのだとすれば、民進党をはじめとする野党がしっかりと論陣を張って、世論を喚起することが重要だ。野党が将来、自民党に変わって政権を担おうとするのであれば、こうした政権与党が気づいていないこと、あるいは気づいていても是正しようとしない部分に切り込んでいくことが、長い目で見た時に有権者の信頼を勝ち得る道ではないだろうか。