霞が関から見た永田町

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地域経済分析システム (RESAS:リーサス)

第二次安倍政権の看板政策のひとつに地方創生があった。地方創生の掛け声のもとで、東京への一極集中の是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、地方に活力をもたらすことが目指されたのである。

 

地方創生においては、自治体は、地域の実情や産業の実態を踏まえた地方版総合戦略を策定することにより、国からの各種の支援策を受けることが出来るとされた。現在話題になっている加計学園による獣医学部新設を可能とした国家戦略特区制度の中にも、地方創生特区というものが存在しており、様々な手段を用いて地方創生が指向されていたことがうかがえる。

 

地方創生は国として進める政策ではあるが、自治体の自主的な取組を支援するという形を採用している。その取り組み支援策として「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」の提供がある。経済産業省は、地方創生の取組を情報面から支援するため、内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)と連携し、このRESASを2015年4月から提供しているのである。

 

RESASは、各種のデータを活用して、産業構造や人口動態、人の流れなどを可視化するシステムである。一般的な利用も可能であり、自治体の取り組みの支援策に留まらない活用の可能性を秘めている。実際に、2017年3月に内閣府主催で実施されたRESASプログラミングコンテストでは、民間企業などから優れたアプリケーションが提案された。

opendata.resas-portal.go.jp

 

先ごろ、経済産業省から「地域経済分析システム(RESAS)利活用事例集2017」が公開された。

www.meti.go.jp

 

RESASを用いて得られた情報に基づき、政策や施策の検討、その立案に結びついた31の事例が取りまとめられている。この事例集は2016年にも発表されており、全国各地でRESASの活用の成果が表れていると言えるだろう。

 

地方創生は、ローカル・アベノミクスとも呼ばれ、当初は石破茂衆議院議員が担当大臣に就いたこともあり、注目を集めた。しかし、いまや加計学園の件にも見られるように、どちらかというと否定的な文脈の中で登場する事柄になりつつある。

例えば、2代目の地方創生担当大臣である山本幸三衆議院議員は、先の4月に滋賀県で開催された地方創生セミナーで、学芸員に関して問題発言を行い、それを撤回するという騒動を起こしている。地方創生にあっては観光振興も重要となり、学芸員が観光振興に理解がないという指摘の中での発言であったが、地方創生について否定的に捉えられかねない出来事であった。

 

遡れば、民主党政権の時には、地域主権改革が進められていた。「地域主権」という言葉に対して批判もあったが、地域が自ら考え、決定し、行動をする。そして、その支援を国は行う。これは、核心の部分で地方創生とも通じる。当時は、RESASのようなツールは提供されなかったが、現在はツールも提供されているのである。それぞれの地域がRESASのようなツールを用いて自らの判断を下す限り、それは奨励されるべき事柄である。ただし、経済産業省が公開した事例集の事例を横展開と称して様々な地域に取り組むよう強いるとなると少々無理があるだろう。経済産業省としては、「宜しければ参考にして下さい」程度にしかとらえていないのかもしれないが、これが一人歩きして、全国で参照しなければならないものとして扱われるようになると、地方創生も看板倒れに終わりかねない。地域にはそれぞれ課題があり、その解決策は各地域がRESASのようなツールを駆使して見つけ出すべき事柄である。どこかでRESASを用いて見出された解法がそのまま別の地域でも有効であるというほど、地域の課題は簡単ではない。