霞が関から見た永田町

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【小池百合子 第一声】ワイズスペンディングの支出削減に政策を提案したい

 

 

希望の党が打ち出した政策集を読み込んでみた。小池代表の色が強く打ち出された政策集だ(https://kibounotou.jp/pdf/policy.pdf)。その中で注目したい項目があった。それは「ワイズスペンディングによる支出削減」である。

 

 

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これ自体は実は何も言っていない。ムダ使いをなくして支出を削減します、と主張しているようにも見えるし、政策の立案・実行のプロセスに工夫することで支出を削減しようと主張しているようにも見える。政策集にはその具体策が示されていないので、希望の党が何をしようとしているのか、その全体像は正直よく分からない。ただ、やろうとしている方向性、意気込みは分かる。

 

 

そこで、本ブログでは、ワイズスペンディングによる支出削減の具体的な対応策を提案しようと思う。それは「稼ぐ公共」である。稼ぐ公共という言葉を初めて聞く人も多いと思うので、少し解説したい。

 

 

三方よしの改革、それが稼ぐ公共

 

まず、この稼ぐ公共は何かを一言で表せば、「三方よしの行政改革」ということになる。三方とは誰か。行政、企業、市民の三者である。行政にとっても、企業にとっても、市民にとっても、メリットがある行政改革、それが稼ぐ公共である。そんなウマい話があるのかと思われるかもしれないが、存在するのだ。理由は後述する。

 

 

このテーマはまだ政治家で気づいている人は殆どいない。少なくとも国会議員の中には存在しない。政治家がそのような状況なので、市民も気づいている人はほとんどいない。民間にはわずかだが、存在する。まさにブルーオーシャンの政策テーマである。ワイズスペンディングを掲げる希望の党が、ブルーオーシャンである稼ぐ公共に関心を持ってくれれば、新しいタイプの行政改革が進むことになるだろう。

 

 

稼ぐ公共で公園が生まれ変わる

 

早速、稼ぐ公共とは何かについて触れよう。日本各地にある公共施設を見て、みなさん、同じ感想を持っていると思う。どこも閑散としていて、魅力に乏しいのだ。公園、図書館、公民館、河川敷など、自治体が保有する公共施設、公共空間はそこかしかに存在するが、有効に活用されているとは言い難い。それもそのはずで、従来、こうした公共施設、公共空間は税金で整備して、税金で維持管理する対象として見なされてきたからだ。

 

 

図書館を魅力的な場所にしよう、公民館を魅力的な場所にしよう、河川敷を魅力的な場所にしよう、という動機が働かない。整備することが目的で、整備さえすれば、あとは安全に運用されていればよかった。そのせいで、全国軒並み、公共施設、公共空間というのは魅力に乏しい場所ばかりなのである。

 

 

ここで発想の転換をしてみよう。図書館にしても公民館にしても公園にしても、市民がアクセスしやすい場所にある。これは大きな強みだ。これらの公共施設、公共空間を不動産という視点で眺めれば、不動産が持つ本来価値を最大限に引き上げようという発想になるはずである。

 

 

もし、みなさんが駅前の一等地にビルを持っていたとして、そのビルが収益を上げていなくて平然としていられるだろうか。普通はいい立地にあれば、それ相応の収益を上げられるように努力をするだろう。ここに稼ぐ公共のヒントがある。長らく日本の公共施設、公共空間は稼ぐという視点で運用されてこなかったため、本来持っているポテンシャルが十分に引き出されていないのである。

 

 

ワイズスペンディングで市民にも恩恵

 

公園を不動産と見立てて、園内にカフェやレストランの設置を認めたらどうなるだろうか。自治体はカフェやレストラン事業者から地代を撮ることができる。その地代を公園管理費に回せば、支出が減るワケだ。まさにワイズスペンディングである。事業者にとってもメリットがある。公園は市民が憩う場所。集客が見込める。今までカフェやレストランを建てらなかった場所に新しく進出できれば、それはビジネスチャンスの創出に繋がる。

 

 

もちろん、市民にとってもメリットは大きい。公園といえば、お世辞にも魅力的とはいえない購買店があって、美味しくもないパンやハンバーガーが販売されていて、ほかにお店もないから仕方なくそれを買うというのは、よく見る光景だ。しかし、そんな公園に魅力的なカフェやレストランができれば、公園の魅力が増すことは間違いない。

 

 

冒頭、稼ぐ公共は三方よしの行政改革だと触れたのは、そのためだ。行政にとっては支出の削減、新たな収入の確保に繋がり、民間事業者にとっては新たなビジネスチャンスの確保、市民にとっては賑わいの創出。誰も損をしない、みんなが得をする、まさに三方よしなのである。

 

 

稼ぐ公共は世界的な潮流

 

これは世界的にも一つの潮流となっている。その代表的な都市がニューヨーク市。2001年にマイケル・ブルームバーグが第108代ニューヨーク市長に就任してから、ニューヨークは都市政策を転換していった。ニューヨーク市が保有する公園は次々と稼ぐ公園へと塗り替えられ、道路までも稼ぐ対象にしてしまった。

 

 

特筆すべきは、これら公園や道路を稼ぐ対象に切り替えたことで、地域の治安もよくなり、かつ周辺の歩行者交通量が増え、近隣の商圏の物販も数字が向上したのである。そして長らくニューヨーク市のお荷物だったイーストリバー沿の港湾用地は高級ホテル、高級レジデンスが公園に併設し、今や一大観光地になっている。

 

 

その代表的な公園がブルックリン・ブリッジ公園だ。公共施設、公共空間を不動産に見立てる、稼ぐ公共を都市政策として採用したニューヨーク市はブルームバーグ市長時代に長年の懸念であって市の財政赤字を解消してしまった。まさにワイズスペンディングによる支出削減のお手本のような都市と言っていいだろう。

 

 

日本にも萌芽はある

 

日本でも、その萌芽はある。大阪だ。大阪では10年ほど前から河川の有効活用に乗り出している。国の規制緩和が始まる前から、国とかけあって難しい案件を次々と実現してきた。代表的なエリアが北浜だ。ここはビジネス街で、土日は人がほとんど通らない街だ。今、ここが平日はもとより土日も賑わいを見せている。それを実現したのは、河川沿に並ぶビルの1階部分から、河川のコンクリート護岸の上に、川床をつくれるように規制緩和を行なったのである。ただ、それだけと思われるかもしれないが、これが効果抜群である。カフェ、イタリアン、スペインバルと実に様々な飲食店がこの新しくできた川床をお店の魅力として打ち出して、人が集うようになった。

 

 

ほかにもある。大阪城公園だ。これは非常にわかりやすい。これまで大阪城公園は指定管理料を民間事業者に支払ってきた。どの自治体でもよくあるスキームだ。ところが、今、大阪市は大阪城公園で年間に2億2600万円もの収入を得ている。これも不動産の視点である。大阪城公園は立地、知名度どれを取っても最高のポテンシャルを有する。市民が憩い、集える機能を有している限りは、民間企業のビジネスをここで自由に認めますと舵を切ったのである。大きな収益を見込める場所なのだから、ちゃんと対価を大阪市に支払ってくださいね、ということで設定された金額が2億2600万円である。電通や読売テレビ、大和ハウスなどJVが落札した。しかも、これらの民間企業が大阪城公園の植栽管理なども請け負うため、2億2600万円は大阪市の丸々収入である。

 

 

国土交通省の改革には乗り気だ。既に都市公園法や河川法などで規制緩和は着実に進捗している。問題はまだ事例が少ないこと、そして市民サイドにもこうした取り組みへの理解が乏しいことである。ここに政治の役割がある。仕組みを整えることに加えて、世論の合意形成を図れるのは政治しかない。しかも、その最大の装置は選挙である。

 

 

いよいよ始まった総選挙。ワイズスペンディングによる支出削減を掲げる希望の党には、より具体的な対応策を提示してもらいたい。このブログに関心をもってもらえれば、幸いだ。